「業務でのAI活用、どうしてる?」— WeWork横浜で見えた、現場のリアルな悩み4つ
2026年5月13日(水)、WeWorkオーシャンゲートみなとみらいで、業務でのAI活用をテーマにした少人数の勉強会を開催した。 経営層、税理士、総務、人事、マーケティング — 職種も役割も会社規模もバラバラのメンバーが集まり、現場でのAI活用のリアルを2時間近くにわたって持ち寄った。
参加者の多くが口にしていたのは、「結局、何が正解なのか分からない」という感覚だった。ツールは揃っている。情報も溢れている。しかし、社内で実際にAIを「使われる状態」にするまでの距離が、思った以上に遠い — そんな現場の声が、立場を超えて重なった夜だった。
本記事では、当日のディスカッションから見えてきた現場で実際に起きている4つの論点を整理する。同じ悩みを抱えている担当者・決裁者の方には、判断材料として参考になるはずだ。
当日の様子 — 異業種が集まる小さな円卓
会場はWeWork横浜・オーシャンゲートみなとみらい8階のラウンジ。WeWorkメンバーに限らず外部の参加者も歓迎する形で告知し、20名弱が円卓を囲んだ。年齢層は20代後半から50代まで幅広く、業種も製造業、IT、サービス業、フリーランスと多岐にわたった。
冒頭の自己紹介では、ほぼ全員が「業務でAIを何らかの形で使っている」と答えた。一方で「会社全体として使いこなせている」と答えた人は、ほぼゼロだった。
この個人レベルでは使っている/組織レベルでは使えていないというギャップこそが、当日のディスカッションの背景にある最大のテーマだった。
論点1 — 「結局どのツールを使えばいいのか分からない」
最も多く出てきた質問が、これだった。
ChatGPT、Claude、Gemini、Copilot、NotebookLM、Gamma、Canva — 名前は聞くが、何がどう違うのか、どれを社内で標準にすればいいのか、誰も自信を持って答えられない。個人で複数のツールを契約している人もいれば、「会社で使えるのはCopilotだけ」という人もいた。
興味深かったのは、ツール選定の悩みが「機能の違い」ではなく「使い分けの基準」にあった点だ。 「ChatGPTは何でもできる」と聞くと、逆に何に使えばいいか分からない、という声が複数の参加者から出た。
この日の議論で共有した実用的な使い分けの目安は、おおむね以下の通りだ。
- ChatGPT — 日常の「ちょっと聞きたい」、画像生成、雑談的なブレスト
- Claude — 文章作成、長文資料の精読、議事録、提案書、コード
- Gemini — Google Workspace環境での業務、長文の一括処理、調査
- Copilot — Microsoft 365を使っている会社の日常業務全般
そして共通する判断軸として、「会社で既に契約しているものを優先する」「機密情報を扱うなら必ず法人プラン」という2点を、当日繰り返し強調した。
論点2 — 「個人プランで業務情報を入れていいのか不安」
複数の参加者が、はっきり口にしないまでも気にしていたのが、これだった。
個人プランのChatGPTやClaudeに、社内の議事録や顧客情報を入れて作業させている — そういう運用が、現実には多くの会社で起きている。シャドーIT、というよりはシャドーAIだ。
ここに対する明確な回答はシンプルだ。業務利用は必ず法人プラン(Enterprise / Workspace / Team)を使うこと。 一人あたり月3000円の差で、入力内容が学習に使われない契約、SSO、監査ログ、データ削除といった企業向けの統制機能が得られる。
「コスト」の話に聞こえがちだが、本質はガバナンスを後回しにしたツケが、後でいくらで返ってくるかという問題だ。
論点3 — 「Claudeって、3つあるの?」
中盤の議論で、参加者の一人が出した質問が、その場の空気を変えた。
「Claude、Claude Cowork、Claude Code — これって、別の製品なんですか?」
似たような疑問は、ほぼ全員が持っていた。同じ「Claude」という名前で、Web版・Cowork・Code と入口が分かれており、それぞれ対象ユーザーも使い方も違う。
整理するとこうなる。
- Claude(チャット) — 全員向け。日々の相談相手。ブラウザ/アプリでの1往復会話。
- Claude Cowork — エージェント型モードで、自分のPC上のローカルファイルを直接読み書きする。Downloadsフォルダの整理、複数アプリをまたぐ作業など、「席を立って任せられる」仕事に向く。
- Claude Code — エンジニア向け。コードを直接読み書きする。ターミナル(CLI)から使えるのが最大の特徴。
ポイントは、Coworkは「エンジニア不要で業務自動化が始められる」入口だということだ。社内の事務作業、ファイル整理、定型レポート生成といった領域は、エンジニアの工数を待たずに業務部門が自律的に進められる。
この「業務部門が自分で進められる範囲」と「エンジニアの支援が必要な範囲」を見極めることが、AI活用の組織設計では決定的に重要になる。
論点4 — 「用語が分からないと、ベンダーの話が判断できない」
最後に印象的だったのは、決裁権を持つ立場の参加者から出てきた一言だった。
「コンテキストウィンドウとかエージェントとか、用語を知らないと、そもそもどこから始めればいいか分からない」
これは、現在のAI市場の構造的な問題を突いている。ベンダー側は専門用語で語るが、購買側がその用語を理解していないと、見積もりの妥当性も、技術選定の良し悪しも判断できない。結果として「とりあえず大手の言うことを聞いておく」「とりあえずPoCを発注する」という意思決定に流れ、PoC地獄に陥る企業が後を絶たない。
決裁者がすべての用語を完璧に理解する必要はない。 ただし、コンテキストウィンドウ、トークン、ハルシネーション、RAG、エージェント、ファインチューニング — この6〜7語くらいは、稟議や予算判断の場で出てきた時に「何を意味するのか」を把握しておく必要がある。
参加者向けに配布した資料には、これらの用語を実務担当者向けに噛み砕いた12項目の用語集を収録している。エンジニア向けの定義ではなく、「営業資料に出てきた時に何を意味するか」が分かるレベルで整理した。
Furious Greenからの視点 —
「2026年は、説明責任のフェーズ」
最後に、主催者としての視点を一つ書いておきたい。
2023年から2025年にかけて、生成AIは「実験のフェーズ」だった。とりあえず触ってみる、ChatGPTで何ができるか試してみる — そういう探索的な使い方が許される時期だった。
しかし2026年は違う。 経営層は「AIに何を投資して、何のリターンを得たのか」を株主や上層部に説明する責任を負い始めている。情報セキュリティ部門は「AIの利用実態を統制できているのか」という問いに答えなければならない。現場は「具体的にどの業務でどう使っているのか」を可視化することを求められている。
当日の参加者の多くが感じていた「個人レベルでは使えている/組織レベルでは使えていない」というギャップは、この説明責任のフェーズに企業が入りつつあることの表れだ。
Furious Greenは、まさにこのギャップを埋めるための研修とコンサルティングを提供している。エンジニア向けには内製化を支援し、業務部門向けにはCopilot・ChatGPT・Claudeを「使われる状態」にするための定着化研修を行っている。
「自社のAI活用が今どの段階にあるのか分からない」「次に何から手を付ければいいか整理したい」という方は、AI導入成熟度診断(無料)か無料相談からお気軽にどうぞ。
次回のお知らせ
「業務でのAI活用、どうしてる?」勉強会は、今後も継続して開催していく予定だ。次回の日程・テーマが決まり次第、Furious GreenのニュースレターおよびFacebookページで案内する。
「こんなテーマで深掘りしたい」というリクエストがあれば、お問い合わせフォームからぜひお寄せください。
Furious Green合同会社は、日本企業のAI内製化を支援するAI研修・コンサルティング会社です。業務部門向けの定着化研修から、エンジニア部門のRAG・LLM・エージェント実装支援まで、ベンダーロックインなしで企業のAI活用を伴走しています。